俳句の作り方    天牛かみきりの俳句

 天牛の髭にんげんを訝しむ  柘植史子つげふみこ

かみきりのひげ にんげんを いぶかしむ

 

 

 天牛かみきりが夏の季語。

「最も普通に見られるのは、ごまだら天牛で4センチ前後の長楕円形、鞭のような長い触覚をもつ。

前翅は硬く黒地に白い斑点がある。

捕まえるとキイキイと鳴く。

長い触覚は牛の角を連想させ、空を飛ぶので天牛と書き

口器が髪の毛をかみきれるほど鋭いのでこの名がついた。」

(俳句歳時記 夏 角川書店編)

 天牛の髭にんげんを訝しむ

 

 

 天牛の髭にんげんを訝しむ

 

 

 句意を申し上げます。

天牛の髭はまるで私と言う人間をいぶかしんでいるようです。

 

 

 鑑賞してみましょう。

庭の隅の天牛がゆっくりと私の方へ向きを変えました。

その向き直りが周りの空気を少し動かしました。

小さな動きでしたが注意がこちらへ向いているのがわかりました。

まるで私の存在を静かに確かめるようでした。

 訝しむとは相手に向けた注意の角度だと思います。

天牛は眼ではなく気持ちの目をこちらに寄せてきました。

その気配は人間の私をそっと包み込みました。

観察していたはずの私が、いつの間にか観察される側にいました。

 天牛はただそこに居るだけで私との間合いを詰めました。

両者の間にある張りが「訝しむ」と言う感触を生みました。

世界の関係が、ふっと入れ替わる一瞬を句は捉えています。

人間中心の視線がほどけ、天牛のまなざしが残ったのです。

 天牛の髭にんげんを訝しむ

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